玉名市での豪雨災害と医療供給の継続について
当院では、主にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や慢性心不全の患者さんに在宅酸素療法を導入しています。
在宅酸素療法は、ご自宅で安定して酸素を吸入できるようにする治療で、息切れの改善や活動量の維持、生活の質の向上を目的としています。
在宅酸素にはいくつかの方式がありますが、そのひとつに液体酸素を利用する方法があります。
液体酸素は、酸素を極低温(-180℃以下)に冷却して液化したもので、気体に比べて約1/800の体積に圧縮されています。
そのため、小型の容器にも多くの酸素を蓄えることができるのが特徴です。
ご自宅には「母器」と呼ばれる50kg程度の大型のタンクを設置し、そこから外出用の携帯ボトルに移し替えて使用します。
電源を必要とせず持ち運びがしやすいため、買い物や散歩、通院など日常生活の幅を広げるのに役立ちます。
酸素というと「ロケットの燃料」を連想される方もいらっしゃいます。
実際、スペースX社のファルコンロケットをはじめ、多くの宇宙ロケットでは液体酸素が燃料として使われています。
しかし、在宅で使用する液体酸素は、医療用に設計された安全な容器や供給システムを通じて提供されますので、正しく扱えば危険性は高くありません。
また、在宅酸素を続ける上で大きな課題となるのが災害時の対応です。
本年8月11日には玉名市内でも豪雨災害があり、数名の患者さんも被災され停電による医療機器の使用制限が問題となりました。
酸素濃縮器は電源を必要とするため、停電時には使用が困難になりますが、液体酸素は電源を必要とせず供給できる点で大きな利点があります。
在宅酸素療法は、息苦しさを和らげるだけでなく、安心して生活を続けるための大切な治療です。
特に液体酸素は、災害時の備えとしても有効な選択肢となります。
当院では、患者さんお一人おひとりの生活に合わせた方法を一緒に考え、継続できる支援を行ってまいります。

