ケレンディア(フィネレノン)の心腎同時保護作用について
近年、慢性腎臓病(CKD)と心不全は「心腎連関(Cardiorenal Syndrome)」として捉えられるようになり、両者を同時に管理する重要性が高まっています。
特に糖尿病患者では、CKDの進行が心不全発症リスクを増大させ、逆に心不全が腎機能低下を加速させる悪循環が形成されます。
この心腎連関の病態には、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の活性化、慢性炎症、酸化ストレスおよび組織線維化が深く関与しています。
フィネレノンは非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であり、従来のスピロノラクトンやエプレレノンとは異なる特徴を有します。
特に心臓および腎臓組織への分布バランスが良く(心腎組織分布1:1、別表参照)、ミネラルコルチコイド受容体を介した炎症・線維化シグナルを強力に抑制することが知られています。
アルドステロンはナトリウム再吸収や血圧上昇のみならず、心筋や腎組織において炎症細胞浸潤や線維芽細胞活性化を促進し、臓器障害を進展させます。
フィネレノンはこれらの病態の上流を抑制することで、心臓と腎臓の双方に保護効果を発揮します。
腎保護作用については、当院も日本の施設として臨床試験に参加したFIDELIO-DKD試験およびFIGARO-DKD試験において、2型糖尿病を合併したCKD患者で腎機能低下、末期腎不全への進展、アルブミン尿増加を有意に抑制することが示されました。
フィネレノンは糸球体内圧の低下のみならず、尿細管間質における炎症や線維化を抑制することで、構造的な腎障害の進行を抑えると考えられています。
一方、心血管保護作用も注目されています。
FIGARO-DKD試験では心不全入院リスクの有意な低下が認められ、さらに2024年に報告されたFINEARTS-HF試験では、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者において、心不全増悪および心血管死の複合エンドポイントを有意に減少させました。
これは、心筋線維化抑制や左室リモデリング改善作用が関与していると考えられています。
特に注目すべき点は、フィネレノンが「腎臓を守ることで心臓を守り、心臓を守ることで腎臓を守る」という心腎連関そのものに介入できることです。
従来の治療では腎保護あるいは心不全治療のどちらか一方に重点が置かれることが多かったですが、フィネレノンは慢性炎症と線維化という共通病態に作用することで、両臓器を同時に保護することが可能となりました。
現在ではACE阻害薬またはARB、SGLT2阻害薬、そしてフィネレノンを組み合わせた治療が、糖尿病合併CKD患者における心腎保護の基盤治療として位置づけられつつあります。
今後はCKDのみならずHFpEFや心腎代謝症候群(CKM症候群)に対する治療戦略の中核薬剤として、その役割はさらに拡大すると考えられます。
当院では適応のある糖尿病関連腎臓病や左室駆出率の低下していない慢性心不全の方(CKD合併)ほに処方開始をしています。






